マンション・一戸建ての修繕費

マンション・一戸建て・アパートの形式基準(フローチャート)に基づく修繕費と資本的支出の判定目安、資産計上・経費処理について初心者向きにわかりやすく解説。

◆修繕費と資本的支出の判定の解説

 賃貸アパートや収益マンション物件などの大家さんや不動産経営を行なっている法人であれば、リフォーム工事や付帯設備の交換を行う際の費用が修繕費になるのか?それとも資本的支出となるのか?という点について考えた経験をお持ちの方が多いのではないじゃろうか?

 また法人で不動産投資を行なっている場合、その会社の経理担当者は勘定科目や仕訳の際に、どの科目を使用すべきか迷うことも多いじゃろう。

 修繕費.comでは、判定フローチャートや多くの事例を用いながら、やや解りにくい感のある「修繕費」の扱いについて入門者向きにわかりやすく解説を加えておる。

 これから不動産投資を行おうと考えておる方や、既に大家業を営んでおるが修繕費について学習しておきたい方などの参考となれば幸いじゃ。

◆修繕費とは?修繕費の定義について

 不動産所有者の中でも主に企業及び個人事業主が営利目的として所有する投資用不動産の会計処理を行う際に修繕費の勘定科目の仕訳で判断に迷うケースが存在するものじゃ。

 これは経理におけるリフォーム費用は「修繕費」「資本的支出」の2つの項目に明確に分類することが定められておる為じゃな。

 その為、このリフォーム費用は修繕費となるのか?それとも資本的支出となるのか?この判断基準を覚える為には、まず始めに修繕費の定義について把握しておく必要がある。

 尚、国税庁が解説する修繕費の定義では「固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額」と記載されておる。

 投資用不動産のリフォーム費用を修繕費として仕訳するケースは、主に「破損箇所の原状回復工事」「建物を維持するために不可欠となる定期工事費」「経年劣化した付帯設備の交換」などが該当するという訳じゃ。

修繕費とみなすリフォーム工事【画像】

◆修繕費は必要経費として認められる

 修繕費と資本的支出の主な違いは、一年でリフォーム費用全額を必要経費とするか?それとも減価償却資産として資産計上し複数年で段階的に必要経費としていくかの違いじゃ。

 リフォーム費用は修繕費であっても資本的支出であっても最終的に必要経費として参入できる額に変わりはない。

 しかし、会計処理の仕方次第では決算時の決算書の状況や、大家さん個人の確定申告に大きな影響を与える可能性がある点を必ず把握しておく必要があるのじゃよ。

◆資本的支出とは?

 資本的支出とはリフォーム工事を行った結果、建物の使用可能年数の延長をもたらす場合や結果的に「資産価値が上昇すると判断されるような工事」に分類される費用のことじゃ。

 リフォーム費用を資本的支出として仕訳するケースは、主に「付帯設備の新設費用」「空室率を高めるためのデザインの変更にかかる費用」、また同じく近年の入居者のニーズの変化…続きを見る

◆原則は修繕費となっているが

 固定資産の修理や改良等の為に支出した工事代金やリフォーム費用などの金額は原則として修繕費として損金算入することが認められておる。

 しかし、国税庁の見解では実際に行われた修理や改良等が固定資産の使用可能期間を延長させる工事である場合や価値を増加させる工事に該当する場合は、資本的支出として扱うように通達を行なっておる。

◆国税庁が告示する修繕費の解説

 固定資産の修理や改良等の為に支出した費用は基本的には修繕費であるが、条件によっては資本的支出にもなりうる。

 では、この判定はどのように判断していけば良いのじゃろうか?

 ここがポイントになるのが、国税庁の告示しておる以下の記述じゃ。

修繕費になるかどうかの判定は修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなくその実質によって判定する

 さすが国税庁とも言うべきか、この文章を見る限り判断が難しくどちらともとれなくもない記述となっておる事がわかるのぉ。

 尚、国税庁は修繕費として認められないケースを幾つかの事例を交えて段階的な形式基準で解説しておる。

 この形式基準を解りやすくまとめたのが以下の修繕費と資本的支出判定フローチャートじゃ。

◆判定フローチャートは「YES」「NO」方式

 ここから解説する判定フローチャートは「YES」「NO」方式で上から順に進んでいき、項目に該当する場合に修繕費か資本的支出かを判定する事ができるようになっておる。

修繕費と資本的支出判定フローチャート【画像】

 実際にアパートの一室が空室になった場合に簡易的なリフォームを検討したり、ややおおがかりな壁の補修を行う際の補修工事…続きを見る

◆アパートの一室の退去時に壁と床の張り替え工事を行った場合

 所有している賃貸アパートの一室にいた住人が契約期間終了となり退去した。

 この退去時の際に汚れていた壁紙を全て張り替え、リビングまわりのテーブル付近の床に椅子で引きずった傷が多数あった為、リビングまわり一帯の床材を全て張り替えた。

 このリフォーム工事にかかった費用の総額は46万円である。

◆原状回復工事はほとんどのケースが修繕費

 不動産経営を行う場合に、おそらく最も頻繁に行われる工事が退去時のリフォーム工事じゃろう。

 不動産物件は土地とは異なり、毎年経年劣化が進む固定資産じゃ。

 また賃貸物件の場合は賃借人が居住する事によって壁材や床材、取り付け家具などに徐々に傷みが生じてくるのも当然のことじゃ。

 尚、この今回の事例のように退去時に入居前の状態に居室を戻す工事…続きを見る

◆一棟マンションの屋上防水工事を行った場合

 築17年の中規模一棟マンションを購入したが、建物屋上部分のトップコート塗装に剥離が生じており、更に部分的に小さなクラックが入っているのを確認。

 まだ雨漏りなどの被害が生じていないが今後の更なる経年劣化が心配。

 そこで付き合いのある防水業者に見積もりをとってもらい屋上防水工事一式を依頼することにした。

 この屋上防水工事にかかる工事費用の総額は120万円である。

◆屋上防水工事は修繕費か資本的支出か?

 一棟マンションや一棟ビルを所有している場合は、屋上部分が陸屋根式構造となっている為、定期的に屋上防水工事を行う必要が出て来る。

 屋上は外壁と同じく常に風雨にさらされている部分でもあり、経年劣化も進みやすい部位のひとつじゃ。

 尚、今回の事例のように大掛かりな塗装工事や防水工事を行った場合は、屋上防水工事の技術力も性能も毎年のように向上している事から、原状回復という概念を超えて建物の性能、耐久性が向上する資本的支出として判定すべきではないだろうか?という点が判定…続きを見る

◆20万以下と20万超の見積もりが含まれるリフォーム工事

 築24年の中規模の賃貸アパートを経営しているが、畳の部屋を全てフローリングにしようと考えている。

 畳からフローリングへのリフォーム工事は、賃貸人が入居中に工事を行う事が難しいため、賃貸人が出た時に順次工事を行っていく予定で数年かけての工事になることを計画している。

 この際、ちょうど退去の申し出が2件入った為、付き合いのあるリフォーム会社に両部屋の工事費用の見積りを依頼することにした。

 この畳からフローリングへのリフォーム工事にかかる工事費用は以下の通りである。

A室(2LDK)⇒24万円
B室(1LDK)⇒16万円
工事費用合計⇒40万円

◆1室単位での交換が可能な設備

 賃貸マンションや賃貸アパートなどの集合住宅の場合、全ての居室が同じ間取りであるとは限らない。

 その為、今回の例題のように同じ工事を行った場合であっても、各居室ごとに工事費用が異なるケースがあるのは当然の事じゃ。

 尚、例題のように、1室単位での交換が可能な設備に関しては各居室ごとの見積金額で資本的支出や修繕費かを判断する事が可能となっておる。

◆畳⇒フローリングへの交換は修繕費になるのか?

 畳からフローリングへの交換は、修繕費として判定する事が可能じゃろうか?

 フローチャートへ進む前に、今回のように物件そのものの性質、用途が変更となる工事の場合は物件の価値が上昇する工事と捉える事になる。

 その為、結論から言うと今回の工事は資本的支出として資産計上する事が正解じゃ。

 但し、今回の工事では工事費用総額が40万円となっておるが、この40万円全てが資本的支出となる…続きを見る

◆防犯設備の新設をする場合の判定

 築30年の1ルーム26世帯の中規模賃貸マンションを経営しているが、空室率を改善させるために新たに設備投資を検討している。

 大家仲間に空室の改善を施すための対策について相談したところ、該当物件は築30年経過していることもあり防犯対策に不安があり、防犯設備を設置する事で印象が変化するのでは?とアドバイスを受けた。

 そこで、テレビモニター付きインターフォンの価格を調べてみたところ、取り付け工事費用まで全て込みの価格で1世帯あたり、37,000円で設備投資ができる事が解った。

 全世帯にテレビモニター付きインターフォンを設置した場合の合計金額は以下の通りである。

37,000円×26世帯=962,000円
設置費用込の合計金額⇒96万2千円

◆セキュリティー対策は不可欠になりつつある

 築年数がある程度経過している賃貸物件と新築の賃貸物件のひとつの特徴としてセキュリティー面の違いがあるのは間違いないじゃろう。

 近年の新築賃貸物件の多くは、「防犯シリンダー」と専用の「ディンプルキー」を新築時から導入しピッキング対策を行っている事も多く、中規模以上の賃貸物件であれば「防犯カメラ」を導入しておるケースも多くなってきておる。

 尚、費用対効果が高く、導入しやすい防犯グッズのひとつにテレビモニター付きインターフォンがあるが、例題のような築年数の古い物件の場合は一定の空室対策効果があると言われておる。

 但し、これらの新しい設備の導入は明らかに物件の価値を高める要素を持っている点把握しておくことが大切じゃ。

◆各居室ごとに判定するため26室すべてが修繕費となる

 今回の例題にあるテレビモニター付きインターフォン設備の設置は、修繕費として必要経費扱いとなるなのか?それとも資本的支出として資産計上し減価償却資産とすべきなのか?

 今回のケースでは素人目で見ても明らかに資産価値を高める投資費用である為、「資本的支出」と容易に判定できる。

 しかし、テレビモニター付きインターフォンは各住居ごとに設置する設備であり、個別で交換が可能…続きを見る


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